STDとは
STDとは性行為によって 感染するすべての疾患を意味します。
昔は性病予防法という法律があり、「性病」と呼ばれていました。
1999年に感染症法ができ、新しく「性感染症」と呼ばれるようになりました。
性病(いわゆる狭義の性病とは梅毒、淋病、軟性下疳、そけいリンパ肉芽腫の4つである) を含み、性病のほかにクラミジア、性器ヘルペス、尖形コンジローム(尖圭コンジローム)、AIDS,マイコプラズマ、トリコモナスス、芥鮮、毛虱、ウイルス性肝炎なども含まれる。
性行為感染症の最大の問題は、その病気が本人ばかりではなく、子供達やパートナーに受け継がれてしまうということです。
{各種のSTD}
梅毒、淋病、軟性下疳、そけいリンパ肉芽腫
クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖形コンジローム
エイズ、膣トリコモナス症、毛ジラミ |
{A}STDについて
(1)STDの影響
STDにかかっていても症状が出にくいことがあります。
しかし、からだの中では病気が進行しています。
STDを治療しないでいると次のような影響が起こってしまいます。
@不妊症の原因になる可能性があります。
男女とも不妊症の原因になる場合があります。
妊婦が感染した場合は、流産や早産の原因になりかねません。
不妊症の原因となるSTD:性器クラミジア感染症 淋菌感染症 膣トリコモナス症
A子供に感染します
母親から子供に感染(母子感染)する可能性があります。
肺炎や失明の原因となったり、死にいたることもあります。
(2)STDの一般的な症状
男性の場合は、おしっこをすると痛かったり、うみが出たりします。
女性の場合はおりものの量が増えたり、状態がかわったりします。
それ以外にも皮ふにイボやしこりができるなど、さまざまな症状があります。
(3)STDの波及
STD感染者はここ4〜5年で急激に増加しており、STD全体の国内感染者数は600万人ともいわれています。
日本は、先進国の中でSTD感染者数が増えている唯一の国です。
1年間に発生するSTD患者数は約60万人と推定されています。
今やSTDは特別な人達のみがかかる病気でなく、性生活をもつ人なら誰がかかっても不思議でない感染症になっています。
STDの感染のピーク年齢は、女性は20代前半、男性は20代後半です。
(4)STDの治療
@早めに医療機関を受診
思い当たるふしがある、症状があらわれた、などSTDが疑われたら早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。
STDを扱っているのは、性病科、泌尿器科、皮膚科、内科などで、女性であれば産婦人科の受診も勧められます。
Aパートナーも一緒に治療を
自分がSTDに感染していることがわかったら、パートナーも感染している可能性があります。
このため、必ずパートナーにも検査を受けてもらうようにしましょう。
もし、パートナーも感染していれば二人そろって完全に治るまで治療を続けましょう。
自分が治ってもパートナーが感染しますので、自分だけの治療ではいつまでたっても治癒が期待出来ません。
また、症状が治まったからといって勝手に治療を止めてしまうのは禁物です。
(5)STDの予防
NO SEX…セックスをしない
一番安全で確実なのは、セックスをしないことです。
でも、これは非現実的ですね。
STEADY SEX…特定の人とセックスする
感染していない者同士では感染の可能性はありません。
自分も相手も過去に感染の危険性がなく、セックスパートナーがお互いのみであることが条件になります。
SAFER SEX…より安全なセックスをする
コンドームをつけることを心がけましょう。コンドームで予防できないSTDもありますが、一番現実的で確実な方法と考えられています
{B}各種のSTDについて
(1)梅毒
@梅毒の原因
梅毒は細長いラセン型の細菌で、スピロヘータの一種です。
大きさは10の-2乗mmと細菌としては大きく、活発な錐もみ様の回転運動を行います。
30〜33時間で横断分裂して増殖し、悪環境下では、シスト形のものが出現しますが最適な環境下で復元すると考えられています。
梅毒は、人で増殖するほかに、ウサギの睾丸に接種することで増殖させることに成功しています。
しかし、試験管内での増殖は成功していないため、病原性の機構は殆ど解明されていません。
梅毒は、高温、低温、乾燥にも弱く簡単に死滅し、石鹸水などでも簡単に死滅することが知られています。
A梅毒の感染経路
梅毒の感染の多くは、菌を排出している感染者との性行為によって感染します。
梅毒は粘膜や皮膚の微小な傷口から侵入し、感染して3週間程度で感染部位に軟膏様硬結が発症します。
ただし、この段階では自覚症状を欠くことが多いです。
感染後2年位までの感染力が強く、この時期の感染者は自覚症状の有無をを問わず、性行為によって相手を感染させる可能性が非常に高くなっています。
2年を過ぎる頃になるとそれ以後の感染力は大幅に低下します。
母子感染では、胎盤を介して胎児に感染することが考えられます。
また、親の口腔粘膜疹から幼児が感染する場合もあります。
B梅毒と母子感染
妊娠初期の妊婦が梅毒に感染すると、流産になりやすく、出生したとしても、胎盤を介して直接胎児に感染する胎内感染が起こるため、先天梅毒児として生まれる傾向にあります。
〜0歳で発症する場合
早産、死産、母体内死亡が多い。
皮膚が汚ワイで皺が多い。
肝脾腫、梅毒性軟骨炎を引き起こすことが多い。
0〜2歳で発症する場合
出産時には外見が正常であるが数週間後に発病。
肝脾腫、骨軟骨炎症、貧血、神経梅毒症状を引き起こすことが多い。
2歳以降で発症
ハッチンソン3徴候(実質性角膜炎、ハッチンソン歯、内耳性難聴)、リンパ腺症、肝脾腫、コンジローマ、ゴム腫、貧血、回帰性関節症、神経梅毒症状を引き起こすことが多い。
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C梅毒の疫学(1970年の1/10に減少)
1860年の長崎で船体修理の為に入港したロシア水兵を遊女が慰安することになった際、ロシア船艦長の申し入れにより梅毒の検査を行ったのが日本で最初の梅毒検査として記録されています。
明治、大正になると徴兵時の検査に性病検査が行われるようになり、20歳の男子について統計がとられるようになりました。
戦前は多数の感染者が存在したが、戦後はペニシリンの登場によって感染者は減少しはじめました。
また、梅毒にも流行周期があるようで20年周期でピークを示すことがわかるようになったのもペニシリンの恩恵といえます。
現在、医学の進歩から1970年に6,000件報告されていた患者数は、2001年の報告累計では567件と1/10にまで減少しています。 |
D梅毒の症状
梅毒は症状によって1期から4期まで区分されてきましたが、現在ではそれほど医学的な意味はありません。
また、医学の進歩から、近年では3,4期の梅毒に罹ることはほとんどありません。
1期梅毒
感染して3週間程度で感染部位に赤色をしたしこりのような初期硬結が発症します。
その後、初期硬結を中心に潰瘍を形成して周囲が硬く盛りあがる硬性下疳(コウセイカゲン)になります。
また、しばらくすると、股の部分のリンパ節の腫脹を併発することが一般的です。
この段階では痛みを伴はないため、自覚症状に欠けることが多く、特に女性の場合では2期梅毒の症状になるまで気づかない人も少なくありません。
最近では、初期硬結が複数できる症例が多く、また、潰瘍になりやすい傾向にあります。
2期梅毒
感染後3カ月頃から梅毒が全身に広がり、梅毒性バラ疹とよばれる直径約1cm大の楕円形の淡紅色、または紅色斑が体中にできます。
また、丘疹性梅毒疹と呼ばれる小豆大のブツブツが顔、体、四肢に多発します。
他には、扁平コンジローマ、口腔内特に咽頭部に発症しやすい粘膜疹、梅毒性脱毛が起こる可能性があります。
3,4期梅毒
感染後3年〜10年までを示し、2期に生じた皮疹は自然に消失し、梅毒が潜伏したままこの症期に達します。
中枢神経系にまで病気が進行しているため、脳神経、脊髄の障害をきたす急性梅毒髄膜炎、進行性麻痺、脊髄癆を引き起こすこともあります。
また、代表的な症状としてゴム腫と呼ばれるゴムのような硬さの皮膚結節があります。
この結節は次第に大きくなるとともに中央に潰瘍が生じ、皮下組織から筋層へ、さらに骨にまで及びます。
無治療のまま、この症期に達した人の1/3がこのゴム腫を発症します。
潜伏梅毒
梅毒に感染していますが無症状のまま。
潜伏梅毒は時に第2期症状の再発を起こしますが、その殆どが1年以内であるため、その時期を特に前期潜伏梅毒、1年以降を後期潜伏梅毒として区別することが多いです。
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E梅毒の検査
梅毒感染の初期症状である皮膚の変化から梅毒の疑いが高い場合は、患部をマッサージ゙して出てくる刺激漿液を検体とし、パカインキで染色して梅毒を見つけるための顕微鏡観察を行います。
近年では、症状として現れない潜伏梅毒が多いことから、抗体を検査する梅毒血清反応検査を用いることが多くなっています。
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(2)淋菌感染症
@淋菌感染症の原因
淋菌感染症は、古くから知られている性感染症です。
多量に出る膿汁を精液の流出と考えられていたためgonorrhoeaeと呼ばれ、1979年にAlbert Neisserが細菌学的に正確に記録したことから淋菌はNeisseria
gonorrhoeaeと命名されました。
淋菌は、10の-2乗mm程度のグラム陰性双球菌でコーヒー豆のような形をしています。
生命力は弱く熱や寒冷、乾燥、消毒により簡単に死滅します。また、炭酸ガスとの親和性が高く、5〜10%の炭酸ガス濃度で37℃の条件で発育しやすいです。
淋菌の菌体表面にある線毛が上皮細胞へ付着し感染します。
淋菌は上皮細胞の性質から細胞に取り込まれ細胞内で増殖します。
増殖した淋菌は細胞を破壊し細胞外へ放出され、他の細胞へと入り込み更に増殖を行って繁殖していきます。
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A淋病の疫学(男性に多い淋菌感染者)
淋菌感は1984年をピークに減染症少したが、95年以降また増加し始めている。
1984年以降の減少はエイズ予防キャンペーンによって、危険性の高い性的接触の回避、コンドーム使用の増加のためと思われる
風俗業界の変化からファッションなどによるフェラチオが商品化された1990年代には、女性の咽頭を感染源とした男性患者が増え95年以降増加している原因と考えられている。
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B淋病の症状
クラミジアと同様に、淋菌に感染すると男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎を発症する。
しかし、感染症状はクラミジアより重く、男性の場合は激しい痛みを伴うことが多い。
一方、女性の場合、自覚症状に乏しい場合も多い。
しかし、痛みが伴わないからといって治療をしなくてよいわけではなく、淋菌感染から骨盤内感染症(卵管炎、骨盤腹膜炎など骨盤の周囲の臓器で起こる疾患全般)を引き起こすことも多い。
このことから、不妊症や流産となることもあるので注意しなければならない。
尿道炎
感染して2〜9日で発症し、尿道口が発赤、排尿時に強い痛みと黄色い膿が出る。
放置すると前立腺炎、精管炎などを引き起こすこともある。
子宮頸管炎
膿のようなおりものと尿道の不快感、排尿痛が症状としてあらわれる。
しかし、多くの患者が自覚症状を伴わないことが多い。
骨盤内感染症
子宮頸管炎から、月経の際に子宮内膜炎、骨盤腹膜炎、腹膜炎などを併発し、下腹部痛、慢性的な腰痛を感じるようになる。
咽頭炎
軽度の咽頭痛、咽頭の発赤などが症状としてあらわれる。
C淋病の検査
分泌物を滅菌棒などで採取し、これを検査します。淋菌感染症の場合、菌の耐性を確認し、治療方法を決めるものでもあるため非常に重要な検査になります。 |
D淋病の治療
一昔前では、淋菌感染症に対してペニシリン系の薬が用いられていました。
1980年代に入るとペニシリンが効かないペニシリナーゼ産生淋菌が増加し始め、ペニシリン系薬の変わりにニューキノロン系薬が用いられるようになりました。
しかし、ニューキノロン系薬においてもペニシリン系薬の場合と同様な現象がおき、近年、ニューキノロンに対して耐性のついた淋菌が出現しています。
このように淋菌は自身を守るために遺伝子レベルで変化していくことが知られています。
淋菌感染症の治療には、1日2、3回の薬の服用を7日間程連続投与する場合が多い。
完治していないにもかかわらず、服用を中断したり服用を忘れることで、生き残った淋菌が薬剤耐性を獲得する可能性も高いので、患者も十分注意して治療にあたる必要があります。 |
(3)軟性下疳
@原因
軟性下疳は、軟性下疳菌が感染して発症する。
性行為によってのみ感染する。HIVを合併しやすい。
A症状
潜伏期間は、数日〜1週間です。
男性・・・亀頭溝に豆大の潰瘍
女性・・・陰部、膣に豆大の潰瘍
リンパ節の腫れ、痛み、化膿、発熱。梅毒の合併で硬性下疳となる。
B治療
サルファ剤、ミノサイクリン、セリフトアキソン等を使用する
(4)そけいリンパ肉芽腫
梅毒、淋病、軟性下疳、に続き、第四性病といわれる。
@原因
性交によって感染します。
日本ではほとんど見られない。東南アジア、アフリカ方面へ旅行に行く人は注意。
クラミジア・トラコマティスの感染による極めてまれな性病。
A症状
潜伏期間は4〜35日。
感染部に痛みの無い小さなできものができ、太ももの付け根が腫れる。
そけいリンパ節のほかに、腸骨や股部のリンパ腺炎を合併することもあります。
発熱し、膿を持ったできものが膣や外陰部から尿道や直腸に及び、外陰部が象皮病のようになる。
女性の場合、外陰部、肛門、直腸の潰瘍ができたり、大陰唇、小陰唇が象皮病様になることもあります。
B治療
抗生物質(テトラサイクリン)による治療。
抗生物質の内服で二週間ぐらいでなおります。
(5)性器クラミジア感染症
世界的に若年層の感染者がもっとも多い性感染症です。
クラミジア・トラコマチス 「Chlamydia trachomatis」の感染によって発症します。
@性器クラミジアの原因
クラミジア属はpneumoniae, psittaci, pecorum, trachomatisとあるが、性感染症の原因となるものはtrachomatis(トラコマ−ティス)だけです。
クラミジアの大きさは10の-4乗mmとウイルスより少し大きい位の細菌で、その小ささから、当初はウイルスかと思われたほどでです。
クラミジアは特異な増殖形態を持ち、人の細胞に感染すると細胞内に進入し、細胞質内で分裂増殖を行います。
48〜72時間程度で増殖し、クラミジアは細胞を破壊し細胞外へ放出され、外へ出たクラミジアは他の細胞へと入り込み更に増殖を行って繁殖していきます。
クラミジアは近年急増している性感染症で、感染報告が現在もっとも多い性感染症です。
感染すると男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎などを発症します。
特に女性の場合、不妊症の原因である卵管狭窄症、卵管閉塞症を発症し、卵管周囲癒着なども起こしやすくなります。
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Aクラミジア症の感染経路
あまり認識されていないことですが、クラミジアはセックスによる感染だけでなく、オーラルセックスでも感染します。
これは、クラミジアが円柱上皮細胞に入り込み増殖する特性を持つためです。
円柱上皮細胞とは、分泌物を出したり、養分の吸収を行う個所を形成する細胞で、人の部位として性器や、口の中、腸などがあげられます。
このため、咽喉からでもクラミジアは感染が起こるため、近年のセックススタイルの変化からフェラチオを行う人が増加していること、ファッションマッサージなどによる風俗業界での商品化から、女性の咽喉を感染源とする男性感染者が急増しております。
クラミジアの女性感染者は男性感染者以上に自覚症状が乏しいため、治療に至ることが少なく無意識のうちに感染者を増やしてしまう可能性も高いことも原因の一つと考えられています。
また、妊婦検診においてクラミジア保有者が3〜5%見つかることから、定点報告以上に感染者は多いと考えられています。
Dクラミジア症の影響(不妊症、流産の原因の恐れも)
女性がクラミジアに感染した場合、その体の構造から速やかに上腹部へと感染が浸透していき、短期間に腹腔内へ波及する恐れがあります。
感染初期には自覚症状がなく治療対象にならないものが、長期間を経て骨盤腔へ波及し、卵管閉塞、卵管周囲癒着を引き起こし不妊症の原因となる傾向があります。
不妊症患者の所見をみるとクラミジア抗体陽性者の80%に卵管周囲の癒着が認められ、60%に卵管閉塞が認められています。
また、妊婦に感染するとプロスタグジンを活性化させ、陣痛誘発させ、このため、妊娠初期では流産の原因となり、妊娠中期では
早産の原因となっています。
クラミジア症と母子感染
妊婦がクラミジアに感染している場合、分娩時に産道において新生児がクラミジアに感染(母子感染)する恐れがあります。
新生児が感染した場合、クラミジアは増殖に時間がかかることから、潜伏期間は長く、クラミジア結膜炎は生後7日以降、クラミジア肺炎は生後2ヶ月以降に発症することが多い。
Bクラミジア症の疫学 (10代世代に広がりを見せる)
性感染症というと大人のかかる病気と思われがちですが、近年若年層においても広がりを見せています。
2001年の定点観測データを見ると若い女性の患者は、15〜19歳で全体の11%、20〜24歳では19%と大きな割合を占めていますが、これは観測定点として産婦人科が多く選ばれているためです。
クラミジアの感染経路のほとんどは性行為ですから、定点に指定されていない病院で治療を受け、報告されていない男性患者の数も同じ位いると十分に考えられます。
また、クラミジアの繁殖サイクルが長いため発症するまで時間がかかることや、感染しても自覚症状が出ない場合も多いことから、無意識のうちに感染者を増やしていることもあります。
このことから、報告以上に多くの感染者がいると考えられ、近年急増している要因であると考えられています。

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C症状
クラミジアに感染すると男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎などを発症します。
しかし、感染初期症状が軽く、特に女性は自覚症状が乏しいのが特徴です。
しかし、症状が小さいからといって治療をしなくてよいわけではなく、クラミジア感染から不妊症や流産となることもあるので充分な注意が必要です。
また、自然治癒することはほとんどなく、無治療でもかなり長い間症状の悪化は伴わず保菌状態が続く傾向があります。
1)尿道炎
クラミジアの増殖サイクルが48〜72時間と長いため、潜伏期間が長く発症するまでに1〜2週間かかる事が多い。
発症すると排尿時に軽い痛みと水っぽい膿が尿道から出る。放置すると前立腺炎、精管炎などを引き起こすこともある。
2)子宮頸管炎
おりものと不正性器出血が症状としてあらわれる。しかし、この段階では下腹部などで痛みを感じることは少なく、自覚症状を伴わないことが多い。
白色の水っぽい膿がおりものとして出てきます。不正性器出血は、頸管分泌物の混じった少量の持続性の出血をみることもある。
3)子宮付属器炎
クラミジアに感染して比較的早い時期に発症することが多い。
下腹部に軽い痛みがあり子宮頸管炎の症状を伴うことが多い。
4)骨盤腹膜炎
下腹部の痛み、性交時に痛みを強く感じるようになる。
5)肝周囲炎
上腹部に激しい痛みを感じるようになる。 |
Fクラミジア症の検査
泌尿器科、産婦人科などで検査を受けることが出来ます。
初尿や尿道擦過綿棒、子宮頸管擦過綿棒などを用い、遺伝子検査法または抗原検査法で検査します。
綿棒を用いた場合、多少の痛みと出血を伴うこともあります。
(6)性器ヘルペス
@性器ヘルペスの原因
ヘルペスは外陰部が小水疱やかぶれたようにただれる疾患で、単純ヘルペスウイルス1型または2型の感染、再発で生じます。
ヘルペスウイルスは古くから蔓延しているウイルスで、30年前では人口の90%以上が感染するというほど広く分布していました
A感染経路
単純ヘルペスウイルスの感染経路は大きくわけて2通りあります。
一つ目は、幼少期に周囲の単純ヘルペスウイルス感染者から唾液等を通じて感染し、口内や口唇その他上半身に水疱・潰瘍を生じるケースで、発症の有無はあるが、日本人のほとんどの人が感染していると考えられています。
もう1つの経路は、性行為によって性器に感染するもので、これが性感染症として知られる性器ヘルペスです。
近年では、単純ヘルペスウイルスに感染せずに成人に達する人も増えており、成人してから初感染を受ける例も多くなっています。
単純ヘルペスウイルスは10の-4乗mmとウイルスとしては比較的大きいDNAウイルスです。
ヘルペスウイルスは神経節に潜伏感染し、時々、再活性化されて他の人へ感染させるという特有の性質を持っています。
1型、2型では、生物学的な性格や熱・化学物質などの反応も違い、感染する部位で比較してみると、1型は 目、口、脳など上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いです。
しかし、1型の感染による性器ヘルペスも無いわけではなく、特に女性においては、それぞれの占める割合に大きな違いは見られません。
これは、口腔周辺に感染した1型がオーラルセックスによって性器に感染し、性器ヘルペスの原因となっていると考えられています。
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B性器ヘルペスの疫学
80年代にアメリカで急激に増加をみせ、社会問題となったのですがその後AIDSの発見でこの話題も忘れ去られてしまいました。
日本では87年より厚生省による定点観測が開始され感染者報告件数は横ばいではありますが、その数は無視できないものです。
性器ペルペスの感染報告を年齢別に見ると、他の性感染症に言えるような性活動が活発な若い世代に感染者が偏るのではなく、20〜39歳に渡ってほぼ同数が報告されています。
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C性器ヘルペスの症状
単純ヘルペスウイルスは初感染する時期によって、その症状の度合いは大きく変わります。
日本人の多くは幼少期に初感染し、症状が軽度であったり、自覚症状を伴わない場合が多い。
しかし、成人が初感染した場合は重症になることが多い。近年では、単純ヘルペスウイルスに感染せずに成人に達する人も増えており、性器ヘルペスに悩まされる人も多い。
また、性器ヘルペスは、薬の服用により症状は治まるが、体調不良などをきっかけに再発するため、根気よく治療に当る必要があります。性器ヘルペスに感染してから1年間の再発頻度は、単純ヘルペスウイルス1型の場合では平均1回、2型では平均10回程度起こると言われており、2型の場合は無症候性を含めて再発頻度が高いといわれています。
急性型(初感染)
感染してから2〜10日の潜伏期間を経て、外陰部にカユミ、灼熱感を感じ始め、全身の倦怠感、所属リンパ゚節の腫脹、発熱を伴い、その後、急速に陰部や大腿部が水疱やかぶれたような状態になります。
特に女性の方が男性より深刻で、37℃を越える高熱を出すこともあり、強い痛みから歩行や排尿が困難になり入院が必要となることもあります。
また、1型に感染したほうが2型の場合より、重症となるが2型に比べ再発頻度が低い。
誘発型(過去に感染していたが無症候だった場合)
過去に感染していたがそのときは、無症候で症状は現れずヘルペスウイルスが陰性化したが、免疫低下によって再活性化された場合を急性型とわけ、誘発型という場合があります。
免疫低下の度合いによって症状もかわりますが、陰部に小さい潰瘍や水疱が現れます。
手術、放射性治療、妊娠などにより免疫低下を起こした場合に発症することが多い。
再発型(過去に患ったことがある場合)
症状は比較的軽く、1週間程度で治る事が多い。
症状としては、陰部に小さい潰瘍や水疱が現れます。
水疱や潰瘍の出来る位置はいつも同じような場所に起き、時々、少しずれたり、前回の場所と左右対称の位置に発症することがあります。
再発の契機となるのは疲労やストレス、女性の場合、月経などがあげられ、ほとんどの場合、腰痛や下肢のしびれなど再発する前兆を数日前に感じ、再発する直前の数時間前にはかゆみや痛みとして、これを知ることが出来ます。
再発してしまう性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスは、薬の服用すれば、不活性化し、病変は治癒するが、一度感染すると神経節に潜伏し、ウイルスが完全に無くなるわけではありません。
このため、感染者の体調不良などをきっかけに、ヘルペスウイルスは時々再活性化し、治療が必要となり、 感染者を長年にわたって悩ますことになるのですが、年月が経つことにより再発頻度は低くなっていく傾向にはあるようです。
ヘルペスウイルスが再活性化された場合、必ずしも自覚症状がともなうわけではなく、皮膚などに症状が出ない無症候性の場合もあります。このとき、ヘルペスウイルスは再活性化されたときに、他者へ伝染させる性質を持つことから、ヘルペスウイルスが含まれた感染者の唾液、性行為から気づかないまま次の相手に移してしまうことも多いとされています。
性器ヘルペスに感染してから1年間の再発頻度は、1型の場合では、平均1回、2型では平均10回程度起こると言われており、2型の場合は無症候性を含めて再発頻度が高いといわれています。
E性器ヘルペスの検査
水疱や潰瘍病変からウイルス感染細胞を綿棒で採取し、細胞をスライドガラスに塗抹してモノクロ−ナル抗体を用いた蛍光抗体法で検査します。
この方法を用いると単純ヘルペスウイルスの型も特定でき、簡易な方法です。
血清学的診断は、急性型の場合、発症し始めには抗体は検出されず、回復し始めてから抗体が検出されます。
また、再発型の場合では、治療前と後で抗体価があまり変わらないため、ヘルペスの診断にもちいる際には注意が必要です。 |
(7)尖形コンジローム
@原因
尖形コンジローマはHPV(human papillomavirus)の性的接触感染によりイボのような症状が発生するウイルス性性感染症です。
病原体となるHPVは約8,000塩基対の環状2本鎖DNAを有した10の-5乗mm程の大きさの小型DNAウイルスで、現在、培養細胞で増殖できないため、ゲノムDNAの塩基配列の違いによって90種類以上の型に分類されています。
尖形コンジローマから検出されるHPVの型は、性器、粘膜に感染するタイプ゚の6,11型が主流になっています。 下に感染部位とHPVの型の傾向を示します。
{感染部位の傾向とHPVの型}
皮膚に感染する型
良性イボ: 1,2,4型
皮膚癌になる危険性が高い: 5,8,47型
口腔粘膜に感染する型
13,32,57,72,73型
性器,粘膜に感染する型
6,11型
子宮頚癌になる危険性が高い: 16,18,31型
A尖形コンジロームの感染経路
尖形コンジローマの原因となるHPVは培養細胞での増殖に成功していないため、感染経路は断定されていませんが、皮膚や粘膜の上皮損傷部位に直接的な接触により侵入し、基底細胞に感染すると考えられています。
また、HPVは細胞外では短時間で死滅するため、性行為のような密接になる行為で感染すると考えられます。
特に男性HPV感染者の場合、精液にHPVが検出されることが多く、精液からsexパートナーへと感染する可能性も考えられます。
B尖形コンジロームの症状
HPV感染後3カ月程で自覚症状としてイボが感染部位に発症します。
なかにはカユミや性交時に痛み、出血を伴う場合もあります。
イボの大きさは単発であれば直径1〜4mm、高さ2〜15mm程度で、外観は紅色または褐色で乳頭状、鶏冠状、あるいはカリフラワー状と表現されています。
接触により出血しやすく、2次感染を伴うとただれ、、壊死を起こし悪臭を放つことがあります。
好発部位 男女とも 肛門及び周辺部、尿道口
男性の場合 陰茎の亀頭部、冠状溝、包皮内外板、陰嚢
女性の場合 膣、膣前庭、大小陰唇、子宮口
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C尖形コンジロームの影響(子宮頚癌の90%から検出される)
尖形コンジローマの原因となるHPV(ヒトパピローウイルス)の繁殖生態から、長い期間を経て性器癌になる可能性あることが近年注目を集めています。
男性が罹る陰茎の扁平上皮癌の61%にHPV16型が、18%にHPV18型が検出され、女性の罹る子宮頚部の扁平上皮癌から90%以上にHPVが検出され、そのDNAの型は16型が最も多いとされています。
また、腺癌からは75%にHPVが検出され、18型が多く検出されています。
6,11型に比べ悪性化する要因となる16,18型では、自覚症状に乏しいことが多いため無意識のうちにHPVを広めてしまう可能性があります。また、尖形コンジローマの症例は性器HPV感染症全体の10%ともいわれています。 |
D尖形コンジロームの検査
典型的な尖形コンジローマは乳頭状、鶏冠状の特徴的な形態を持つため、視診で十分診断がつくことが多いです。
また、病巣範囲を確定するために酢酸を塗布しコルポスコープ(膣拡大鏡)を用いて観察します。
HPVの型を断定するために、病変部から細胞を採取しDNA判定を行います。 |
(8)エイズ (後天性免疫不全症候群)
(AIDS:Acquired Immuno Deficiency Syndrome)
エイズとは、エイズウイルス(HIV)の感染によって、人の免疫機能が働かなくなる病気です。
HIVが体の中で増えると免疫力が低下し、健康なときには問題とならない細菌や原虫、カビなどによる感染症(日和見感染症)にかかりやすくなります。
最近医学の進歩により治療方法も進んできましたが、発病すると重い肺炎や脳炎、ガンなどで命を失うことにもなります。
なお、「エイズ患者」とは、免疫機能低下により発病した人をいい、「HIV感染者」とは、ウイルスの感染が判明した人をいいます。
@原因
エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって引き起こされる病気です。
感染すると、免疫力が次第に低下します。
健康な体であれば容易に撃退してしまう病原体による感染症を発症し、熱が出る、急に体重が減る、疲れやすくなる、などの症状が出てきます。
神経障害を起こしたり悪性腫瘍ができることもあります。最悪の場合は、死に至ります。
免疫と病気
体の中にカビ、細菌、ウイルスなどが侵入したときに、体を守るために働く機能のことを「免疫」といいます。
人の体の中で免疫の中心的な担い手は、主に血液の中にある多くのリンパ球(白血球の一種)です。
たえず、体の中をめぐっているリンパ球は、大きく分けると、T細胞とB細胞に分かれます。
T細胞の一種にヘルパーT細胞があります。
ヘルパーT細胞は、免疫システムの総司令官の役割を果たし、いろいろな種類のリンパ球などに指示を出します。
ヘルパーT細胞から指示を受けたリンパ球や抗体は、病原体を攻撃し破壊します。 |
HIVに感染すると
HIVが体内に入ってきてヘルパーT細胞に出会うと、その表面のCD4受容体に結合し、内部に侵入し、増殖していきます。
そして、やがて出ていくときにヘルパーT細胞を壊していくため、免疫の機能が次第に働かなくなっていくのです。 |
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HIVに感染したヘルパーT細胞(電子顕微鏡写真) |
リンパ球の種類
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HIVの感染と増殖 |
A感染経路
まず、HIVはHIV感染者の血液、精液、膣分泌液、唾液、母乳、尿、涙等の体液に含まれています。
このうち、唾液や尿に含まれているHIVは微量で、それらによって感染に至ることはないようです。
まず、HIVの感染経路は、大きくわけて下にあげた3つがあります。
1:性行為感染
現在、世界で最も多い感染の原因が、性行為(つまりセックス)に依るものとなっています。
また、日本においても、新しく報告されるHIV感染者の感染理由のトップをしめています。
もちろん、HIV感染者と性行為を行うことによってHIVは感染していきます。
これは、HIV感染者の精液(男性の場合)・膣分泌液(女性の場合)・血液の中にHIVが高い濃度で含まれているからです。
HIV感染者であるパートナーと性行為を行った場合、精液・膣分泌液・血液中に含まれるHIVが粘膜をとおって血液中に入り込み、HIVに感染する可能性があります。
また、性器に傷がある場合は、HIVが傷口を通じて血管の中に入るチャンスが大きくなるため、感染の可能性は大きくなります。
性行為によるHIV感染の可能性は、0.1〜1%といわれています。
ただ、これはHIV感染者との性行為100回または1000回に1回、HIVに感染する可能性があるととらえるのは良いことだとは思えません。感染する機会はいつ現れるかわからないからです。
HIV感染以外にも、性行為は病原体を媒介させる可能性である行為であることもしておく必要があるでしょう
2:母子感染
HIVに感染している母親が妊娠・出産した場合、産まれてくる子供がHIVに感染する(している)可能性があります。30%〜40%の確率で感染することがあるといわれています。
この母子感染は主に3つのルートにわけられます。
胎内感染
子宮内で赤ちゃんにHIVが感染する可能性があります。
このルートによる感染は防ぐことが難しいようです。
産道感染
赤ちゃんが産まれてくる際、産道の出血を赤ちゃんがかぶることによってHIVに感染する可能性があります。 このルートについては、帝王切開をおこなうことでかなり回避することができるようです。
母乳感染
HIVに感染している母親の母乳には、HIVが含まれています。
これを赤ちゃんがのむことによってHIVに感染する可能性があります。
これは粉ミルクを与えることで回避することができます。
医療が満足に受けられない・人工栄養が普及していない国や地域では、産道感染・母乳感染を防ぐことができないのが現状です。
3:血液媒介感染
血液を媒介としてHIVに感染する可能性があります。
麻薬常習者間の感染
HIVに感染している麻薬使用者が使った注射器を使って麻薬を注射した場合、針や注射器中についていたHIV感染者の血液が血管にはいることによってHIVに感染する可能性があります。
その他の血液媒介感染
血液を媒介に感染するのであれば、輸血による感染の可能性はないのか、といった心配があります。
各種のパンフレットには「心配ない」と記されています。
また、献血で集められた血液は、HIVの抗体検査に必ずかけられており、HIV感染している血液は破棄されているので、ほぼ「心配ない」のは事実だと思います。
Bエイズの発症経過
感染初期(感染から2週間前後)には発熱や喉の痛みなどインフルエンザに似た症状が出ることがあります(感染者の2〜3割程度)。
平均で10年間ほど症状がない状態が続いた(無症候性キャリアの時期)後、急激な体重の減少、著しい寝汗、下痢が続くなどの症状が現れはじめ(エイズ関連症候群の時期)、日和見感染症や悪性腫ようなど、いわゆるエイズの発症となります。
HIV感染者がすべてエイズを発症するかどうかは現段階ではわかっていません。

Cエイズの疫学
エイズは、1981年にアメリカで最初の患者が発見され、1983年に病原ウイルス(HIV)が見つけられました。
その後世界的なエイズ予防の努力にもかかわらず、急速に全世界に拡がっています。
UNAIDS(国連合同エイズ計画)・WHO(世界保健機関)の報告によると2004年末現在、世界の生存HIV感染者・エイズ患者は3,940万人。
また、2004年に新たに490万人がHIVに感染したと推計されています。
わが国においてもHIV感染者・エイズ患者は急激に増加しています。
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日本のHIV感染者・エイズ患者届出数の
年次推移(累計)
(厚生労働省 平成17年1月2日現在 |
男女別HIV感染者・エイズ患者届出数の年次推移
(厚生労働省 平成17年1月2日現在)
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Dエイズの検査
HIVに感染したかどうかを知るための「HIV抗体検査」は全国の保健所等で受けられます。
保健所での検査は匿名で、また原則として無料で行われています。検査日は保健所によって異なり、また予約が必要な場合もありますので事前に確認しておきましょう。
電話での確認の際には「保健師さんに健康の相談があって電話しました」と言い、保健師さんが電話に出てからHIV抗体検査のことを聞くようにすれば、「HIV抗体検査」と何度も説明せずにすみ、スムーズに確認が取れます。
事務処理の関係や便宜上必要としている保健所などでは「仮の名前」を聞いてくることがありますが、本名を言う必要はありません。適当に思いついた名前を伝えましょう。
居住地以外の保健所でも検査を受けることができます。
電話での予約の際や検査当日に担当者から「感染したと思われる日から3ヶ月(もしくは2ヶ月等)以上経過しているか」と聞かれることがありますが、この質問に「いいえ」と答えると検査を断られる場合があります(「はい」と答えれば検査を受けられます)。
HIVに感染してから抗体ができるまでには通常4〜8週間かかるため、感染した日からおよそ2ヶ月以内に抗体検査を受けた場合には、HIVに感染しているのにも関わらず結果が「陰性」となることがあります(これをウインドウ・ピリオド[空白期間]といいます)。
つまりHIV抗体検査で分かるのは「およそ2ヶ月前の結果」です。
検査を受ける本人が「およそ2ヶ月前の結果」であることを理解することはとても重要なことです。
しかし、ウインドウ・ピリオド(空白期間)があることと、感染したと思われる日から3ヶ月(もしくは2ヶ月等)以上経過していないと検査を断る(リスク空白期間を経てからでないと検査は受けさせない)ということは本来、別の次元の話です。ですが、現状では「感染したと思われる日から3ヶ月(もしくは2ヶ月等)以上経過しているか」という質問に「いいえ」と答えると検査を断られる場合が残念ながらあります。
検査結果は検査を受けてから1週間もしくは2週間後(地域や施設により異なる)に、本人だけに直接説明されます。
Eエイズの治療
無症候性キャリアの間は、通常2、3カ月に1回通院して、経過を観察します。
この間は、生活方法のアドバイスが中心になります。
治療は、免疫やHIVのウィルス量など、状態に応じて行われます。
現在、HIVを完全になくす薬はありませんが、抗HIV剤治療によって血液中のHIVの増殖を抑制し、病状の進行を遅らせることができるようになっています。
さらに、日和見感染症の予防投薬や治療、悪性腫瘍の治療が行われ、かなりの効果を上げています。
エイズ治療の拠点病院 厚労省HIV対策拠点病院案内
鳥取県の拠点病院 鳥取大学医学部付属病院 鳥取県立中央病院
(9)膣トリコモナス症
@原因
膣トリコモナスという原虫によって感染します。
肉眼で見分けることができない原虫(ゾウリムシのようなもの)が性器内に入り込み炎症をおこします。 |
性行為以外からも感染する
性行為による感染が主ですが、下着、タオル、便器、浴槽での感染の可能性があります。
よって、性交経験のない女性や幼児にも感染することがあります。 |
A症状
男性の場合、主に感染するところは尿道で、性行為により感染します。
男性にはほとんど症状が出ませんが、尿道炎の症状が出る場合もあります。
主な症状
尿道からの分泌物(うみ)、軽い排尿痛 |
尿道への感染だけの場合、排尿により洗い流される可能性があります。
前立腺や精のうに寄生している場合もあります。
女性の場合は、膣だけでなく、子宮頸管(子宮入口の管)、 膀胱、尿道へも感染します。
主な症状
あわ状の悪臭の強いおりものの増加
外陰部や膣の強いかゆみや痛み
治療せずに放っておくと炎症が卵管まですすみ、不妊症や早産、流産をまねく可能性もあります。
ただし、症状のない感染者が20〜50%とも言われています。
B検査について
男性…尿道からの分泌物(うみ)を検査します。
女性…膣からの分泌液を検査します
C治療薬
5-ニトロイミダゾール系抗原虫薬を服用します。
女性は、膣錠を使用する場合もあります。 |
(10)毛ジラミ
@原因
毛じらみ症(けじらみしょう)は毛じらみ(毛虱)という吸血昆虫による性行為感染症です。
成虫の大きさは1mm〜2mmで肉眼的には、陰毛の毛根にしがみついている時は「シミ」に、陰毛を移動中には「フケ」にしか見えないため、発見には苦労する。
成虫は陰毛の毛根にフック状の鈎爪で身体を固定して皮膚から吸血する。
卵は陰毛に粘着している。

A症状
潜伏期間は1ヶ月から2ヶ月とされている。
陰毛部の非常な痒みである。その痒さは、男女を問わず人前で陰部をかきむしるほどと云われている。 また、吸血した皮膚より出血して下着に血痕が点々と付着するので、血尿を訴えて患者さんが来院することがある。
B検査
原虫の捕獲・確認のみである。
C治療
剃毛(ていもう):陰毛を全部剃ること。
成虫が生息できない環境にし、卵を陰毛に産み付けられないようにする。
何かの事情で剃毛出来ない場合には、次の2つの方法をとる。
櫛でブラッシング:目の細かい櫛で陰毛を丹念にすくことで、陰毛に付着した卵を除去する。
殺虫剤:商品名スミスリンパウダーを1日1回陰毛部に散布して成虫を殺す。2週間続ける。
新しく出たスミスリンL(リンスタイプ)は卵にも有効であり、陰毛を剃る必要がない。
オイラックス軟膏を補助的に使うこともある。
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